口座は止まる。葬儀費用も実家の光熱費も、いったん自分が払った

親を見送って金融機関に連絡すると、その口座は止まります。私はそれを知らずに連絡しました。葬儀費用も、クレジットカードの残債も、父の実家の水道光熱費も、いったん自分が払うことになりました。

お金がなくて困ったという話ではありません。知らなかった、という話です。

相続の準備で、銀行にも相談していた

父の相続の準備には1年半かけました。その中で、銀行の担当者に相談することも何度かありました。だから父が亡くなったとき、わりとすぐに銀行へ伝えました。伝えるものだと思っていたからです。

準備の経緯は別の記事に書いています。

1年半かけて準備した。それでも遺言書は間に合わなかった

相談していた相手に、そのまま報告した。それだけのことでした。口座がそのあとどうなるかは、考えていませんでした。

連絡した時点で、引き出せなくなった

金融機関へ相続の連絡をすると、その時点からその口座の取引は原則として制限されます。出金も入金も止まります。私はそれを、連絡したあとに知りました。

Ichi

知っていたら、先に100万円くらいは引き出していたと思います。

ただ、あとから振り返ると、それも簡単ではなかったはずです。ATMの1日あたりの引き出し限度額は決まっています。窓口へ行くにしても、まとまった額をその場で用意できたかは分かりません。

結局、手持ちの現金で対応しました。

葬儀社への支払いは、早く来た

葬儀社には、最初に手付のような形で少額を渡し、残りを式のあとに支払いました。期日の猶予は2週間ほどあったと記憶しています。私はわりとすぐに支払いました。

見送った直後に、まとまった支払いが一つある。口座が止まっている状態で、そこを越える必要があります。

待ってくれたものもあった

クレジットカードは、止める連絡をして、残債の有無を確認しました。いつまでに払ってください、とは言われませんでした。落ち着いたタイミングでご入金をお願いします、という言い方でした。

父の実家の水道光熱費も、同じような対応でした。督促を受けた記憶はありません。

支払いが一斉に押し寄せてくるわけではない、というのは、あとになって分かったことです。そう分かるまでは、全部すぐに払うものだと思っていました。

あえて残した支払いもあった

父の携帯電話は、しばらく解約しませんでした。父の知人から連絡が入ったときに、こちらから事情を伝えられるからです。

そのあいだの料金は、私が払っていました。落ち着いてから解約しています。

すぐ止めるものと、しばらく残すもの。同じ「父名義の支払い」でも、分けて考える必要がありました。

父のアナログに助けられた

水道も電気も止まりませんでした。すぐに連絡して、その場で手続きができたからです。

できた理由ははっきりしています。父のところには、明細書が紙で届いていました。支払いはクレジットカードや銀行の引き落としでしたが、明細は紙でした。だから会員番号や契約番号がすぐに分かり、電話をしたその場で手続きが進みました。

Ichi

これがメールで受け取る形だったら、ログインIDもパスワードも分からず、契約番号を調べるところから始まっていたはずです。

父はデジタルに強い人ではありませんでした。そこに助けられるとは思っていませんでした。

仮払いという制度を、あとで知った

口座が止まっても、葬儀費用などのために一定額を払い戻せる制度があります。私はこれを当時知りませんでした。使っていません。

もう一歩、調べてみました

今回この記事を書くにあたって気になったのは、あのとき本当に打つ手がなかったのか、でした。そこで深掘りしてみました。法務省によると、2019年7月から、遺産分割の前でも相続人が単独で預貯金を払い戻せる制度があるそうです。上限は「相続開始時の残高×3分の1×法定相続分」で、一つの金融機関につき150万円まで。条文には、限度額は「平均的な葬式の費用の額」なども勘案して定める、と書かれています。

私が立て替えたものは、法律のほうが先に想定していました。知らなかったのは、私だけでした。

「先に引き出しておけ」という話について

調べていると、連絡する前に引き出しておけ、という話をよく見かけます。

私の場合、他の相続人と揉めていません。仮にそうしていても、トラブルにはならなかったと思います。ただ、揉めている場合や、引き出したお金を別の目的に使った場合は、話が違ってくるはずです。

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなす、という規定があります(民法921条)。単純承認をすると、借金も含めて引き継ぐことになります。何が処分にあたるかは事情によるため、ここでは断定しません。

少なくとも、軽い気持ちで人に勧められる話ではないと感じています。

立て替えた分は、あとで戻った

立て替えた分は、相続財産の現金から精算しました。その処理も含めて税理士に任せ、相続が確定したあとに戻ってきた、という流れです。

戻ってはきます。ただ、戻るまでには時間がかかります。その間は自分の財布から出ている状態が続きます。

親と話せるうちに確認しておきたいこと

  • 亡くなったことを金融機関へ伝えると、その口座の取引は原則として止まる。まずこれを知っておく
  • どこの銀行に口座があるか。支店まで分かると、手続きのときに早い
  • 水道・電気・ガスのお客さま番号、契約番号
  • マンションの管理費や修繕積立金、駐車場を借りている場合の支払い方法と振込先
  • どのクレジットカードを使っているか。引き落とし口座はどこか
  • 携帯電話の契約先と支払い方法。すぐ止めるとは限らないため、払い続けられる形かどうか
  • 明細がどこに届くか。紙か、メールやアプリか
  • オンラインで契約しているものは、ログインIDとパスワード。控えは他人の目に触れない場所へ
  • 葬儀費用を、いったん誰がどう払うか。手持ちで払える範囲かどうか
  • 相続人が複数いる場合、立て替えと精算をどうするか、先に話しておく

次に確認する

見送った直後に何がいつまでに必要かは、見送った後の手続きと期限の一覧にまとめています。

相続税の申告や税理士への依頼を考えている方は、相続税の申告と税理士の探し方をどうぞ。

まだ相続が始まっていない方は、親と話せるうちに確認するリストから始められます。登録も入力も不要です。

制度と確認先

  • 金融機関へ相続の連絡をすると、その口座での取引(預金の入出金等)は原則として制限される: 全国銀行協会 預金相続の手続の流れ(2026年8月24日確認)
  • 2019年7月1日施行。遺産分割前でも「相続開始時の預貯金債権の額×3分の1×法定相続分」(同一金融機関につき150万円が上限)まで単独で払戻しができる: 法務省 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)(2026年8月24日確認)
  • 限度額は「標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して」定めるとされている(民法909条の2)。相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなす(民法921条): e-Gov法令検索 民法(2026年8月24日確認)

この記事は私の家族の体験をもとにしています。金融機関の対応や必要な手続きは、機関や契約の内容によって異なります。相続放棄を検討している場合など、個別の判断が必要なときは、弁護士・司法書士・税理士などの資格者へご相談ください。

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