墓じまいをして納骨堂へ移した。父はカタログを集めていた

父の葬儀のあと、遺骨を墓に納める前に墓じまいをして、納骨堂へ移しました。結論から書くと、移してよかったと思っています。

ただ、一つだけ心残りがあります。父は生前から墓を移したがっていて、私はカタログまで集めていました。それでも実行したのは、父を見送った後でした。

父は「墓参りが命懸けだ」と言っていた

実家の墓は屋外にあり、駐車場から墓前まで起伏のある道を歩きます。水を入れた桶を持って上がるのが、年々こたえるようになっていました。狭い石段で転びそうになったこともあります。

夏は暑く、冬は寒い。雨や雪の日は近づくのも難しい。父は「墓参りに行くのが命懸けだ」と冗談を言っていました。実際、墓参りの回数は目に見えて減っていました。

墓そのものは気に入っていたようです。ただ、移すこと自体には前向きでした。だから私はカタログを取り寄せ、候補を見比べ始めていました。

それでも、実際に動いたのは父が亡くなった後です。「まだ急ぐ話ではない」と、私も父もどこかで思っていました。

挨拶に行った帰り際に、聞かれたこと

葬儀が終わってから、それまで墓を置かせてもらっていたお寺へ挨拶に行きました。

お悔やみの言葉はありました。少し世間話もしました。そして帰り際に、「こんな時にすみませんが」と前置きをしながら、次の檀家料は誰が払うのかと、はっきり聞かれました。

父が亡くなって間もない時期です。正直に言えば、今それか、と思いました。私は「まだ何も決まっていません」とだけ答えて帰りました。

Ichi

この日に、私はここを出ようと決めました。

「過去2年分が未納です」から始まった水掛け論

その後、過去2年分の檀家料が未納だと言われました。

父からは、払っていると聞いていました。祖母の命日にお参りへ行き、そのときに納めていたようです。ただ、領収書や受領書が手元にあるかは分かりませんでした。あったのかもしれませんし、父が処分していたのかもしれません。私には確かめようがありませんでした。

手掛かりは通帳だけでした。祖母の命日の前に、父が言っていた金額とほぼ同じ額の出金がありました。それを示して、「父は払ったと言っていました」と伝えました。

もちろん、その出金が檀家料に使われたという証拠にはなりません。父は払ったと言い、寺は受け取っていないと言う。典型的な水掛け論です。

最終的には「じゃあいいです」ということになり、過去分を納めることはありませんでした。ただ、その結論についても書面はありません。なお、その年の分はきちんと納めました。

私が嫌だと感じたのは、金額そのものよりも、現金と口約束だけで長年続いていたことです。当事者である父がいなくなった時点で、何も確かめられなくなりました。

そもそも、檀家という仕組みを分かっていなかった

ここまで書いておいて言うのも何ですが、私は檀家という仕組みを正確に理解していませんでした。

檀家とは何なのか。離檀とはどういう手続きなのか。毎年納めていたお金は何に対する費用なのか。呼び方もお寺によって違うようで、私はそれすら分かっていませんでした。

父が何十年も続けてきた関係を、私は名前も仕組みも知らないまま引き継ごうとしていた、ということです。

私の世代には、同じような人が少なくないと思います。宗教との関わりが薄いまま育ち、葬儀で初めてお寺と向き合う。そして、分かっていないから、提示された金額が妥当なのかどうかも判断できません。

Ichi

この記事で一番伝えたいのは、たぶんここです。金額の高い安いではなく、判断するための材料を何も持っていなかったことのほうが問題でした。

墓を壊す費用

墓の撤去費用は請求されました。我が家の場合は、おおよそ70万円から80万円ほどです。

調べた相場よりは少し高いように感じました。ただ、別に離檀料を求められるよりはこの形で、という説明があり、そのまま支払いました。この点で揉めてはいません。

今になって思うのは、そもそも判断の材料がなかった、ということです。父がこの墓を契約したときに、どんな取り決めだったのか。使用規則に何が書かれていたのか。墓じまいのときの費用負担はどうなっていたのか。私は何も知りませんでした。

仮に書面を交わしていたとしても、何十年も前の紙です。たいていは、どこかへ行ってしまっています。

費用や条件は、地域、区画の広さ、石材店、お寺との関係によって大きく変わります。だからこそ、比べる基準になるのは相場ではなく、契約時の取り決めのはずでした。その取り決めを確認できる人が、もう誰もいなかったということです。

手続き自体は、思ったより難しくなかった

一方で、事務手続きで苦労した記憶はほとんどありません。

石材店は墓地の指定業者だったので、こちらで選ぶ場面はありませんでした。

取り出した遺骨は、洗浄してくれるサービスを別に探して依頼し、きれいにしてもらってから納骨堂へ持って行きました。これは墓地や寺院とは関係なく、自分で手配したものです。

私が引っかかったのは、手続きの複雑さではありませんでした。金額が先に決まっていて、支払わざるを得なかったことのほうです。

もう一歩、調べてみました

このとき気になったのは、遺骨は自分たちの判断で動かせるのか、でした。そこで深掘りしてみました。墓地、埋葬等に関する法律によると、遺骨を別の場所へ移すことは「改葬」と呼ばれ、市町村長の許可が必要です。許可を出すのは、移転先ではなく、遺骨が現にある場所の市町村長でした。

実務としては、いまの墓地の管理者に埋蔵を証明してもらい、移転先の受入証明とあわせて、遺骨のある市区町村の窓口へ改葬許可を申請する、という流れになります。必要書類や様式は自治体ごとに異なるため、窓口での確認が必要です。

つまり、自分たちの判断だけで勝手に取り出して運ぶことはできません。

納骨堂は3か所を見て決めた

見学したのは3か所ほどです。判断の軸は立地と費用でした。宗派については、どこも問われなかったので、そこで悩むことはありませんでした。

費用は、我が家の場合、初期費用が数十万円、それに年1万円ほどの管理費がかかります。それまで納めていた檀家料と比べると、負担はかなり下がりました。

選んだのは、建物の中にある、最近よく見かけるタイプです。参拝ブースで手続きをすると、立体駐車場のように自分の家の遺骨が出てくる仕組みでした。

風情という点では、屋外の墓のような趣はないかもしれません。正直、最初はそう思いました。

ただ、いまは移してよかったと思っています。駐車場から近く、雨の日でも濡れません。段差もありません。

三回忌のときに分かったこと

三回忌は、天気の悪い日でした。

それでも、集まった高齢の親族から出たのは、よかったね、という言葉ばかりでした。天候に左右されず、車から近く、段差がない。それだけで、参るという行為の負担がまったく違います。

参拝に来た父の知人からは、自分も考えようかな、という声もありました。

親族から反対はありませんでした。もともと檀家料が高いと感じていた人が多かったようです。

私自身も、この一件を通して、自分の墓を持ちたいという考えはなくなりました。妻も同じ考えです。

家族が納得しているなら、形は墓でなくてもよい。そう考えるようになりました。

ただし、子どもだけでは決められないこともある

我が家は親族が少なく、反対もありませんでした。だから決められました。

ただ、親族が多い場合や、こうした考えに否定的な年長の方がいる場合は、子どもの世代だけで決めるのは難しいはずです。あの家は墓をたたんだ、という受け止め方をされることもあり得ます。

だから、親が元気なうちに、親を含めて話しておくほうがよいと、いまは強く思います。親自身が移してもよいと言っていた、という事実があるだけで、話は進めやすくなると思います。

Ichi

我が家の場合、父はそう言っていました。それでも私は、その言葉を父が生きているうちの行動に変えられませんでした。

親と話せるうちに確認しておきたいこと

  • 墓の使用権が誰の名義になっているか。契約書や使用許可証がどこにあるか
  • 寺院や霊園との取り決めが書面にあるか。檀家料や管理料の金額、支払い方法、支払い時期
  • これまでの支払いの記録が、通帳や領収書のどこに残っているか
  • 墓を移す、あるいはたたむ場合の費用負担が、使用規則にどう書かれているか
  • 親自身が、いまの墓のままがよいのか、移してもよいと考えているのか
  • 誰が墓を引き継ぐ想定なのか。親族の中に、強い意見を持つ人がいるか
  • 納骨堂や樹木葬などを検討する場合、親自身が見学に行ける体力があるうちに、一緒に見ておく

財産額や相続の結論から入る必要はありません。まずは、いまの墓の書類がどこにあるか。それだけでも十分です。

次に確認する

見送った後の手続き全体の期限は、見送った後の手続きと期限の一覧に早い順で整理しています。

親とまだ話せる方は、親と話せるうちに確認するリストの「家 — 実家と家財のこれから」で、お墓の項目から話してみてください。

制度と確認先

  • 改葬の定義と許可: 墓地、埋葬等に関する法律 第2条第3項、第5条。改葬の許可は、遺骨が現に存する地の市町村長が行うと定められています。厚生労働省 法令等データベース(2026年8月15日確認)
  • 墓地・埋葬等に関する制度全般: 厚生労働省 墓地・埋葬等のページ(2026年8月15日確認)
  • 改葬許可の申請窓口と必要書類: 遺骨が現にある市区町村の窓口です。様式や必要書類は自治体ごとに異なります。案内の一例として福岡市 改葬許可申請の手続きについて(2026年8月15日確認)
  • 墓や仏壇を誰が引き継ぐか: 民法第897条。系譜、祭具及び墳墓は、通常の相続財産とは別に、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定められています。法定相続分で分けるものではありません。e-Gov法令検索 民法(2026年8月15日確認)

費用の妥当性、離檀の進め方、承継者の決め方などで意見が分かれる場合は、まず寺院や霊園の使用規則を確認したうえで、市区町村の窓口や、相談分野に合う資格者へご確認ください。

この記事は私の家族の体験をもとにしています。費用、寺院や霊園との取り決め、親族の受け止め方は家庭ごとに大きく異なり、同じ対応がすべての家庭に当てはまるとは限りません。

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